剣道哲学 

 

○武道の意味

戈(ほこ)を止める”と書いて“武”と書くように、現代の“武道”の意味とは、争いを避ける道を模索することを意味します。武道を通して自分を律っし、鍛えることで、自らを治めコントロールし、争いを避ける道を求めることにこそ武道の本懐があると考えています。

 

○打って反省、打たれて感謝

 

もし打突部位を外れているのに一本を取られた場合、その打突が一本とみなされた理由を考えるようにしてください。例え打突部位を外れていても、審判員の方々が一本とみなした理由は何かしら存在するはずだからです。

 

当たっていなかったと言ってしまうのは簡単なのですが、構えも崩れず、完全にかすりもしない打突を一本とみなすことは、どんな不正が行われようと不可能です。

 

剣道には“打って反省、打たれて感謝”と言う言葉が存在します。これは、自分の打突が相手を捉えた場合には、自分の打突が何故相手を捉えたのかを顧みて改善点を探し、至らない点を反省し、もし相手の打突が自分を捉えたならば、何故打たれたのかを考え、その弱点を逃さずに打ってくれた相手に対して感謝するようにと言う考え方です。

 

 

○剣道修行の過程 〜守破離(しゅ・は・り)

 

剣道の修行の過程は一般に“守破離”と言う言葉を用いて説明されます。

 

“守”とは、初歩の段階で先生の教えを忠実に守り、修行に励み、心身共に鍛えることを指します。

“破”とは、先生の教えを完全にマスターしたあと、その教えを自分なりに改良・改善し、先生の教えに従い作り上げてきた自分の殻を壊す事を意味します。

“離”とは、先生から離れ、自分自身の道を切り開いて行くことを意味します。

 

この考え方は剣道のみならず、人生における生き方をも説いている言うことが出来ます。

 

 

○打突の機会を作る方法 〜三殺法(さんさっぽう)

 

“三殺法”とは、相手の“竹刀・技・気”を殺す(使えないようにする)ことで相手の隙を作り、自分の打突の機会を作る方法です。

 

竹刀を殺す:相手の竹刀を左右に押さえる、または巻き技などを使い相手の竹刀を自分   の中心から外し、自らの打突の機会を作ることを指します。

 

技を殺す:自分から技を積極的に出し、相手に技を出させる余裕を与えないようにしたり、相手の技に対して全て応じ技を出すことで、相手が精神的に技を出せないようにして、相手の技を殺すことで自分の打突の機会を作ることを指します。

 

気を殺す:相手の竹刀・技を殺すことで、相手に精神的なプレッシャーを与え、相手の打 突の気持ちを削ぎ、精神的に有利な状況を作り出すことで自分の打突の機会を作ることを意味します。

 

○四戒(しかい) 〜驚、懼、疑、惑(きょう、く、ぎ、わく)

 

剣道は体力を主としていますが、精神面の作用も大きく動作に影響しています。

その精神面の鍛錬として、心に起こってはいけない四つの戒め(いましめ)があります。

驚・・・相手の動作に驚き心の平常心を失ってしまうこと。(おどろく)

懼・・・相手に対して恐怖の念を持ってしまうこと。(おそれる)

疑・・・自分の技が通用するのか?と言った自分自身に対する疑いを持ち、自身を失うこと。(うたがう)

惑・・・心が迷い、決断力を失うこと。(まどう)

 

以上、四つが稽古中又は試合中に心に起こると隙ができてしまいます。心の動きを支配するように心掛けてください。

 

○懸待一致(けんたいいっち)

 

『懸』とは自分から打突する事、『待』とは相手の打ちを受けることを指します。初心者に陥りがちなのは、このどちらかだけになってしまい、相手の動きにお構いなしの自分勝手な剣道になってしまいます。

自分から相手に打つだけでなく、相手の打ちを受けるだけでもなく、応じ技や出鼻技のように打ちと防御が一体になった技を心掛けてください。

 

○一眼、二足、三胆、四力(いちがん、にそく、さんたん、しりき)

 

剣道での重要な要素として、

 

1、眼・・・相手の動作の起こりや状況を素早く判断するための情報を得る力が、まず一番重要です。

2、足・・・円滑な足捌きがなければ、正確な打突はできません。

3、胆・・・胆とは何事にも動じない強い精神力を指します。

4、力・・・力とはただ力だけでなく、技も兼ねたものでなければなりません。

 

以上が、挙げられます。以上のことを心掛けて稽古に臨んでください。

 

○交剣知愛(こうけんちあい)

剣を交えて、相手を愛(いと)しむことを知るということ。

剣道は竹刀と言う竹の棒を使って相手を傷めつけることがその目的ではなく、剣を交えることで相手を知り、相手にまた自分と剣を交えたいなと思わせるような剣道を目指すべきと言う教え。

 

○逆胴が一本になり難い理由

一般的に逆胴(左胴。自分から見て相手の右側)は余程綺麗に当たらないと一本にならないと言われています。

と言うのも、本来であれば武士は2本の刀を自分の左腰に差しています。ですから、もし大刀を使って勝負をしたとしたら、小刀が腰にあり、相手を切ることが出来ません。つまり、こんな所にも現代の剣道の中にまだ刀を使うことから派生した考え方が残っていると言うことが分かります。

 

逆胴に限らずに剣道では刀を使うことから派生した考え方が残っています。

“刃筋”と言う考え方です。刃筋とは、どのようにして相手を打突したか(切ったか)と言う刃の軌道のことを指します。

刃筋を正しく打突しない場合(面を打突する際に竹刀の弦が横を向いているなど)、一本にはなりません。竹刀でただ相手を打突するのではなく、刃筋正しく打突することを心掛けて下さい。

 

○先(せん)

先(せん)とは、相手の機先を制して勝つ機会のことをいいます。

先には主に三つの先があります。先とは単純に動作のことだけを指すのではなく、精神的な要素も多く含まれています。

l        先々の先(せんせんのせん)

相手の打突を予測し、そこに生じる隙を打つ機会のことを指し、出端技がこれに当たります。

 

l        先前の先(せんぜんのせん)《対の先(ついのせん)》

相手に隙が生じた所を打つ機会のことを指し、出端技以外の仕掛け技がこれに当たります。

 

l        後の先(ごのせん)

相手の打突を外してできる隙を打つ機会のことを指し、応じ技がこれに当たります。相手が打ってくるのを待っているのではなく、相手がこちらを打たざるを得ない状況を作り出し、そこを逃さずに打突することが後の先です。


(C)Tatsushi2005 All Rights Reserved.
このサイトに関する文章、ならびに画像は、管理人Tatsushiの著作物です。無断転載転用を禁止致します。
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送