剣道を学ぶということ

『剣道』は刀を用いて相手を倒す技術をより安全に向上させる為の手段として日本で発展し出来上がってきたものです。現代では、『刀』を用いて稽古することはありませんが、『竹刀』と言う媒体で叩き合うと言う、競技としては、一歩間違えると非常に危険なものであることに変わりはありません。そう言った意味でも、『竹刀』を『刀』と同様の心構えで扱い、日々管理に気をつけなければなりません。例えば、日本では『竹刀』をまたぐのは非礼であると考えられています。つまり、『刀』をまたぐと言う行為は、日々大切に管理をしている刀(命のやり取りに使う一番大切なもの)を足蹴にする無礼な行為だと言うことです。

殺し合いの場では相手を殺せばその時点で勝敗が決しますが、殺し合う為の技術を磨くには、相手と共通の認識の基にやらなければ非常に危険が伴いますし、自分の技術を向上させるためには全力を尽くさなければなりません。ですから、相手を尊重し公正を尽くさなければ相手は大怪我を負ってしまいます。危険を伴いながらも、公正を尽くし、自分の技術の向上に協力してくれた相手への尊敬と感謝の気持ちを態度で示すことが礼だと考えられます。現代においても相手への尊敬と感謝の気持ちを忘れないようにしなければいけません。剣道が『礼に始まり、礼に終わる』と言われている所以がここにあります。

その為、試合で相手を尊重することを失した(無礼であると思われる)行為については反則負けと言う厳しい処罰がかせられています。

つまり現代における剣道では、相手を倒すことを目的としながら、相手に対する尊敬の心を持ち、自分自身の技術を向上させ、それに伴う過程で自分自身を磨くことに意味があると考えられます。剣道は暴力ではありません。くれぐれも相手をいたわる気持ちを忘れないようにして下さい。

安全性について

上記のように、剣道はあくまでも安全に自己の向上を図る目的で発展してきました。実際に、竹刀を使って叩き合うと言う要素を含んでいるにも関わらず、巷で行われているスポーツに比べ、怪我をする確立は低いと言われていますし、例えば、剣道着や防具の染色に使われている『藍』(青い色の成分)には殺菌効果があります。

しかし、『竹刀』や『防具』に欠損があった場合、怪我をする確立が非常に高くなります。ですから稽古前、稽古中、稽古後に必ず自分の『竹刀』・『防具』に破損がないか確かめ、欠損があった場合はただちに使用を止め、修理してから使用するように心掛けて下さい。実際に、ドイツでは、欠損した竹刀を使用したために、稽古中に破損した竹刀の一部が面の中に入り相手が死亡する事故が起きています。くれぐれも欠損のある『竹刀』『防具』の使用は止めて下さい。

礼法

○座り方・立ち方

左足を後方に引いて床に膝をつきます(小手をつけていない場合は同時に袴の内側を後方へ払います)。その際、左手に持った『竹刀』を左膝の先端に『鍔』を合わせて床に置きます。『竹刀』は『弦』が自分の方を向き、『物打(刃側)』が外側を向くように置きます。これは座った姿勢の時に相手が襲って来たら、即座に『刀』を抜いて応じることができるようにする為です。『刀』は『刃部分』が外側に沿っており、もし、『刃部分』が自分の側に向いた状態で『刀』を置いておくと『刀』を即座に抜くことが困難になるからです。

次に右足を引いて床に膝をつき、両踵の上にお尻を乗せます。両膝は、間に拳二個程度の間隔があくように座り、足の指だけを後ろで重ねるようにするとバランスが良いです。手は軽くふとももの上に乗せます。

 立つ時は、まず両踵からお尻を離し、足首を折って足の指を床に着けて立つようにします。膝から上を床と垂直になるようにまっすぐにさせ、次に、座る時とは逆に右足を静かに前に出し、左手で竹刀を持ちます。そして、左足を右足に揃えて立ち上がります。

『正座』とは、対面する相手がいつ如何なる時に襲ってきたとしても、すぐに応じられる『座の姿勢』を指します。竹刀を自分の左側にして『刃筋』を外側にするのも、本来であれば『鞘』を左手で掴み、右膝を立て、右手で『刀』をすぐに抜くためです。右膝から座る又は左膝から立つと自分の左側にある刀をスムーズに掴むことが出来ないので座るときは左→右の順で膝をつき、立つ時は右→左足の順で立つようにします。

当然立っている時も、いつでも応じられるような心構えでなければいけません。

○黙想 

 正座の状態から左手の内側を下、右手の内側を上に重ね、右手の人差指の先が左手の人差指の付け根に揃えておきます。次に、両手の親指の先を合わせ、親指と下の指で円を作るようにします。そして、呼吸は腹式呼吸を行い、鼻から吸い、口から吐くようにします。

目は完全に閉じず、一メートル先が見えるくらい(ホントに若干)空けておきます。これは相手が何時如何なる時襲いかかってきても対応出来るようにするためです。

黙想は呼吸を整え、精神の集中力を高める目的で主に稽古前・後に行います。稽古前にはその日の目標を確認し、稽古後の黙想ではその日の稽古を回顧するなどしても良いでしょう。正座をしている時には、黙想に限らず、背筋を伸ばして座ります。黙想の際にリラックスしすぎて、背中が曲がっている人を見かけますが、黙想はリラックスのみを目的としている訳ではありません。あくまで若干の緊張感を保つことを心掛けてください。

○座礼

座った状態から、左、右と手を前に出し、小さな三角形を作ります。そこから肘を床に近づけ、鼻がその三角形の真ん中に来るように背筋をまっすぐにしたまま上半身を折ります。この時、背筋は伸ばしたまま目線はできるだけ相手から離さないようにします。

首を折って礼をしてしまうと、目線が完全に相手から外れてしまうので背筋を曲げないように注意してください。やはり挨拶の時も、対面する相手がいつ如何なる時に襲ってきたとしても、すぐに応じられるように緊張感を持っていなければなりません。

○立礼(提刀から蹲踞まで)

両足を揃え、『提刀』の姿勢(左手を自然に下げ、竹刀を弦が下を向くように左手で持った状態)で背筋を伸ばし、首を曲げずに腰から約15゜上半身を倒します。その際顎は引いたままですが、目線だけは相手から離さないようにしてください。これが立ち礼です。礼の後、静かに体を起し、『帯刀』の姿勢(竹刀を左腰に当て、鍔に親指をかけた状態)をとります。次に右足から歩み足で大きく三歩入り、三歩目の右足を出す時に帯刀の位置から右手で竹刀を上から抜くようにして抜き構え、左足を引きつけ蹲踞の姿勢で構えます。

『提刀』とは『刀』をまだ脇に差していない状態の事を指し、『刀』の場合この姿勢から『刀』を抜くことはありません。それに対し、『帯刀』は『刀』を脇に差している状態を指し、いつでも『刀』を抜ける状態を表しています。“礼”とは相手に対する敬意を表す気持ちであり、「戦闘態勢」の意思を表すものではありません。ですので、『戦闘態勢』である『帯刀』で礼をしては相手に対する敬意を表せません。また、『提刀』の時には『鍔』に指をかけない様に気をつけてください。『鍔』に親指をかけるのはいつでも『刀』を抜けるようにするためなので、戦闘の意思を示したまま礼を行うのもまた矛盾したものとなるからです。


構えと基本動作について

構えた時の体の状態は、曲げた定規が弾ける寸前のような状態、つまり、手を放せば溜まっていたエネルギーが全て勢い良く解放されるような状態で構えるのが理想です。構えた状態から自分が打ち出す時、動き出す予備動作が無く、溜めてあったエネルギーを全て解き放てるような構えをイメージすると良いでしょう。

○足の位置

両足を揃えてまっすぐ立ち、左足の踵を起点にして反時計回りに90°開きます。そして、左足の親指の付け根を起点にして時計回りに90°開きます。つま先は両足とも正面を向くようにします。左足が外側に開いてしまうと、前に蹴りだす時に力が外に逃げてしまい力が上手く床に伝わらないことがありますので、左足は外側に開かないように注意します。

右足は足の裏を全て床につけ、左足は踵を若干(床から30°くらい)上げます。

重心は体の中心の真下にくるようにして、両足の真ん中に置きます。膝は両足とも若干曲げてください。体重は両膝の上に置くような感覚で構えます。


○すり足

『剣道』の基本になる足さばきです。

前に進む場合は、構えた位置から左足で床を押し出し、右足、左足と進みます。動く方向と反対にある足で床を押し、進行方向の足を先に動かし、移動し終わったら押し出した足を引きつけます。基本的にはこの動作の繰り返しによって移動します。『すり足』は細かく早く行うことができれば尚良いです。

移動後はいつでも構えの足の位置になっていなければいけません。常に構えの足の位置を作ることで、いつでも打突できる体勢を作ることが出来るからです。『すり足』の際は、相手に足の裏を見せないように、足のつま先から移動することを心掛けてください。踵から移動する癖がつくと、足を『踏み込む』際に踵から踏み込んでしまい、踵を痛めることになるからです。『すり足』を行う際は、肩の位置が上下せず、床と平行に進む感覚で行ってください。

○踏み込み足  

@前方への『踏み込み足』

剣道において、打突と同時に床を足で『踏み込む』ことで早くて重い打突を可能にします。この『踏み込み足』の方法ですが、最初は『竹刀』を持たせずに、腰に手を取って足だけで練習を行います。

 前方への踏み込み足は、構えの足の位置から、

 1.右足を上げ、左足を蹴り出し、

 2.右膝を軽く屈曲させた状態で、右足の太腿の筋肉を使い、右膝を上げ、右足裏全体から踏み込む

 3.左の大臀筋と右足太腿の筋肉を使って左半身を前に引っ張り上げ、左足を構えの足の位置にもってくる。

4.左足を引っ張り込みつつ踏み込んだ反動で軽く跳躍し、軽く跳躍後の右足に対して「基本の足型」の位置に、左足を素早く引きつける。

この動作の際の注意点は、『踏み込み』を足を継がずに出来るようにし、『踏み込み』後、足が後ろに残ったままになったり、『踏み込み』後の左足の引きつけの際に左足が右足を越えず、素早く基本の『構え』の位置に持ってくるようにすることです。これは踏み込んだ後、素早く次の動作に移れるようにするためです。

この動作を打突と同時に行えるように練習します。踏み込み足が弱いと、どんなに良いタイミングで打突を行うことが出来ても、とても軽く見えてしまいます。しっかりと行えるように、まず足だけで練習して、確実に身に付けるようにして下さい。『踏み込み』が上手く行えない人は、後述する『補足的な練習方法の○踏み込み足の矯正・強化』を参考にして下さい。

この単発の『踏み込み足』が出来るようになったら、小さく速く打つ『二段打ち』(『小手』・『面』などの練習として、構えた位置から足を継がず引きつけず、小さく二回踏み込む練習を足だけで行う)などすると、効果的です。

 『踏み込み』は慣れない人にとってはとても難しいことだと思います。最初は足だけで練習を行い、完璧に行うことが出来るようになったら、竹刀を持って打突と同時に行うように練習した方が効果的です。

 

A後方への踏み込み足

基本的には@の前方への踏み込みと同じですが、この後方への『踏み込み』は『鍔競り合い』から技を出す際に必要になるので絶対にマスターしておきたい技術の一つです。方法としては

1.両脚の膝を少し緩める

2.構えた位置から右足(右膝)を持ち上げ、右足底部で床を踏み締める。右足を踏み込む位置は、基本的に立っている位置で行う

3.同時に、左足が軽く持ち上がる

4.踏み締めた右膝上の大腿直筋を使い、左足と重心を後ろに蹴り下げる

5.左足を指の付け根の足底部から着地させ、膝上の大腿直筋を使い、右足を引っ張り込む

6.右足を指の付け根の足底部から「基本の足型」の予定位置に着地させる

7.左足を指の付け根の足底部から、右足に対して「基本の足型」の位置に着地させる

前方への『踏み込み足』に比べ、後方への『踏み込み』が出来ていない人が多いように見受けられます。前方への技だけでなく、引き技を確実にマスターすることで試合を有利に進めることが出来ます。初心者に多く見受けられるのは、引き技の際に上半身では確実に打突部位を捉えているのに一本にならないケースです。それは、下半身の『踏み込み』がない為、傍から見て、ただ当たっただけに見えてしまっているからです。試合では少ないチャンスを確実にものにしなければなりません。そういった意味でも、普段の練習の中で確実に後方への『踏み込み』をマスターしておかなければなりません。

○開き足

「右開き足」は、
 1.左足の蹴り出しで右足を右斜め前に踏み出す
 2.右足の指の付け根の足底部が着地した瞬間、それを軸として腰を  
   中心に反時計回りの回転をつける(およそ30度〜45度)
 3.素早く左足を右足後方の基本の足型の位置に引きつける

 「左開き足」は、
 1.右足の蹴り出しで、左足を左斜め前方に踏み出す
 2.左足の指の付け根の足底部が着地した瞬間、そこを軸として腰を
   中心に時計回りの回転をつける(およそ30度〜45度)
 3.素早く右足を、左足の後方、基本の足型と線対称の位置に引きつ
   ける

『応じ技』・『返し技』を行う際に使うので、スムーズに行えるようにする必要があります。素振りなどで開き足を使う場合に、体を回転させすぎている人をよく見かけますが、それでは相手を打つことが出来ないので、開き足を行う際、体は常に相手に正対するようにします。


○回り方

すり足を使って前に進んだ後、振り返る際に

1.中段の構えの左手の位置を変えないようにして『竹刀』を床に垂直になるように立てる
 2.右足の指の付け根の足底部分を軸にして反時計回りに180度回転する
 3.立てていた『竹刀』を中段の構えに戻す

以上三つの動作を一連の流れでスムーズに行えるようにします。この動作をマスターすることで振り返りが早くなり、試合などで打突後に振り返った所を打たれることを予防することにつながります。注意点は、振り返った(回った)時すでに基本の『構え』ができているようにすることです。

 回る際に『竹刀』を立てるのは、回転の半径を小さくすることでより速く小さな力で回転する為です。

尚、(仕太刀から見て)元立ちの右側を抜けた場合は上記のように反時計回りに回転しますが、元立ちの左側を抜けた場合は時計回りに回転します。これらは打突後に最短距離で相手に向かって構えるために行うので、相手のどちら側を抜けてもスムーズに足捌きができるように常に意識して練習する必要があります。


○竹刀の握り

左手をへその前に置き、体から拳一つ分スペースを空けた所で『竹刀』を握ります。左手は気持ち内側に絞るようにします。内側に絞ることで、『竹刀』を操作する際に手首の位置で『竹刀』が止まるようになります。手首を内側に絞らないと、手首が横を向いているので、『竹刀』を縦に操作することが困難になります。

右手の位置は、右手を床と平行に挙げ、右手の肘関節の内側の中心に上から『竹刀』の柄頭を置き、その肘を直角に折って『竹刀』を右手で掴んだ位置で握ります。柄が長ければ自分のサイズにあった柄を『竹刀』に合わせた方が良いでしょう。柄が長すぎると構えた時に『鍔』まで握ることが困難ですし、短すぎると打突の際に右肘が伸びきらず、自分の打突が伸びの無い打ちとなってしまう可能性があるからです。

両手の位置が決まったら、『弦』の延長線上に両手の親指と人差し指の分かれ目がくるように置き、親指と人差し指には力を入れないように構えます。親指と人差し指に力を入れて竹刀を握ると腕の上筋に力がはいってしまい、『竹刀』が立ってしまい遠い位置へ『竹刀』を振ることができませんし、肘にも力が入り肘関節が硬くなってしまい『竹刀』を振る動作が大きなものとなってしまうからです。


○剣先の高さと構え

一足一刀の間合いで構えた時に、『竹刀』の延長が相手の喉に来るようにします。構えた時、両脇は紙が一枚ずつ入る程度に空け、両肘は伸びきらず、自然に曲がっている状態にします。

○竹刀の振り

『正面打ち』の場合、リラックスした構えの状態から『竹刀』を振り上げ、肩→肘→手首と順番に関節を下ろしていくように振り下ろし、振り下ろした時に、右腕が床と平行の位置で止まるようにし、『竹刀』は出来るだけ遠くへ振るようにします。感覚としては、釣竿を出来るだけ遠くへ投げるようなリラックスした状態で行います。

振り上げた時に『竹刀』と腕の間から向こう側が見える位置まで上に振りかぶり、肩・肘・手首とリラックスした状態で、肘を軸にしたひし形をイメージし、そのひし形を肘の支点を両側から押しつぶすことで対照の二点が自然と伸びて行く様なイメージで行うと肩と肘のリラックスした感覚を掴み易いかと思います。

○竹刀を振る際の手の内の使い方について

○右手

竹刀を振りかぶる時の右手の指の使い方については

小指付け根の腹部分を正面に押し、人差し指を手前に引きます。

竹刀を振り下ろす場の右手の指の使い方については

親指と人差し指の付け根部分を正面に押し、小指を手前に引きます。

 

○左手

竹刀を振りかぶる時の左手の指の使い方については

小指付け根の腹部分を正面に押し、人差し指を手前に引きます。

竹刀を振り下ろす場の左手の指の使い方については

親指と人差し指の付け根部分を正面に押し、小指を手前に引きます。

○蹲踞

構えた位置からしゃがみ、両足の踵を浮かせた状態のことを指します。『蹲踞』の姿勢から立ち上がってすぐにでも相手に対応出来るように、立ち上がったらすでに『構え』の姿勢が出来ているようにします。その為には、しゃがむ時に構えの足幅のまま左足の親指付け根を軸に若干左足を回転させ、『蹲踞』の姿勢の時、右膝は相手の方向を向き、左膝は若干左前方に開いた形にしておくと、立ち上がって左足の逆方向に若干回転させるだけで済みます。『蹲踞』の時背中を丸めるとバランスが悪くなるのであくまで背筋を伸ばした状態で行ってください。

○姿勢

腰から頭の先までの姿勢についてなのですが、壁に頭・背中・足を付けて顎を引いた状態をイメージして構えます。顎を引き、背筋・頭と真っ直ぐに構えることで見栄えが良く、正確な姿勢を身に付けられるようになります。正確な構えを身に付けると練習中の怪我の予防や癖の矯正にもなりますので、確実に身に付けた方が良いでしょう。全身鏡などで常に自分の構えをチェックするように心掛けると効果的です。

○着装

背中の『胴衣』が出ていたり、『垂れ』の紐が前から見えたり、『胴』をアンバランスに着けていたり、『手ぬぐい』が『面』の後ろから飛び出していたり、『面』を着けた時の後ろの『面紐』の長さがアンバランスであったり、『面』・『胴』・『小手』の紐が稽古中に取れたりしないように注意してください。『着装』が悪い、または見栄えが悪いとそれだけで試合などの際、審判の印象が悪くなってしまいます。

『袴』は胃を膨らませ、その膨らましたお腹のしたから着付け、腰骨の位置で止まるように着装します。『袴』の前を下っ腹から着付けている為、『袴』をはいた後、横から見て若干『袴』の前が落ち後ろが上がって見えるようにはきます。『袴』の長さはまっすぐ立った時に『裾』が足のくるぶしに来るようにします。自分の体格にあった『袴』をはくよう心掛けてください。『垂れ』は『袴』同様下っ腹から着け、胃を膨張させた状態にします。こうして着付けることで、下っ腹に力が入り、腰からスムーズに動くことが可能になります。

 

○目付《めつけ》(目線)

剣道では、相手の非常に素早い動作に対して反応しなければなりません。そのため相手の一箇所だけを見ていては、反応が遅くなってしまいます。

つまり、相手のどこを見るかが重要になってきます。この目線のことを剣道では“目付”と呼びます。

具体的には、視野を広く、遠くの山を眺めるように相手の全体を捉えるようにします。これを“遠山の目付”と呼び、剣道における目線のもっとも重要な考え方とされています。

 

○体当たり

上半身がリラックスした状態、特に肘が固くならないようにして、腰から当たる事を言います。竹刀は構えた位置から左手を動かさずに、竹刀を立てるようにします。こうすることで、体当たり後に引き技など次の技が出し易くなります。肘が伸びた状態で、上半身の力だけで体当たりしてしまうと前かがみになってしまい、自分は技が出せず、相手はその崩れた姿勢に対して容易に技が出せるので不利になります。

有効打突

気・剣・体が一致した打突を指します。

竹刀→
それぞれの部位の呼称を叫び(気)、中結のから剣先までの物打ちで『面』・『小手』・『胴』を、『突き』に関しては剣先で、それぞれの部位を捉え(剣)、実際に切れるような腰から前に出た打ち(体)《踏み込みが伴うと打ちは早く冴えがあるように見える》の全てが同時に行われた打突を指します。

もともと『物打ち』とは、日本刀で物を切る際に最も切れ味の良い所で、剣先から少し下がった所を指します。この日本刀の考え方が現代の剣道にも生きているのです。

※打突の機会(必読)

@ 相手が出て来る時

一番打ち易い所であり、自分より強い相手に一番有効的な打突。『出鼻』を打つためには、いつでも打ちに出れる体勢を常に作っておき、相手が打ちに来る所を自分の『構え』を崩さずに打ちに出る必要があります。その為には、打突の際に左足を継がず(打ちに出るのが遅れるから)、左足に踏ん張り(タメ)を作り、小さく踏み込む(相手が出てくるので自分はさほど前に出る必要は無い)ことがコツです。

A 相手がさがった時

相手が下がって体勢が不十分な時がチャンスです。『引き技』後の下がり際や、構えた位置からプレッシャーに押されて相手が下がった時などがそれに当たります。ただ、相手が意識的にこちらを誘い込んで、こちらの『出鼻』を狙っている可能性があるので要注意です。ですので、下がった時の相手の状況を瞬時に判断する必要があります。 相手が構えていれば、『竹刀』の根元を押さえるような感じで遠間から助走をつけて思い切って面に飛び込み、こちらの勢いに押されて『構え』が崩れて手元が浮いていれば『小手』を打ちに行くと『一本』が取り易いです。

B相手の足が止まっている時

相手が技を出し終わり、足が止まっている時や、構えた位置で足の動きが止まっている時がチャンスです。相手との打ち合いの中で相手の足が止まった瞬間や相手の打ちが外れる、または『竹刀』で受けて相手の打ちが終わり足が止まった瞬間、構えた位置で相手の足の動きが完全に止まった状態の時は、自分から打ちを仕掛ける好機です。

C 相手の構えが崩れている時

構え合った位置から自分の『構え』は崩さずに相手にプレッシャーを与え、相手が堪えきれずに構えを崩した時がチャンスです。相手は構えが崩れており、自分からは技を仕掛けることが出来ないので、上記の三つに比べ一番安心して技を出すことが出来きます。

 

以上の四つでほぼ全てと言えます。言い方を変えれば、これ以外の時に打って行っても、余程の力の差が無い限り打つことは困難だと言うことです。試合や練習の中でいかに上記のシチュエーションを作り出し、そこで打ち込んで行くかが上達への近道です。

心構え

何事も確信を持って行うこと。例え打たれたとしても問題は無いので、打つことを決めたら迷いを捨て、打たれることを気にせず自分を捨てて、思い切り一撃一撃自分に核心を持って最後までしっかりと打ち切る打突を行ってください。その際は怖がって自分の姿勢を崩したり、迷って自分の力をセーブしたりせず、自分の最高の技を出して勝負してみてください。確信を持って怖がらずに思い切り良く自分を崩さずに打ち込む練習を繰り返すことで、試合の際に腰から前に出ることが出来るようになります。試合になるとついつい打たれたくない為に、安全な技で勝負しようとしてしまい、結果、悔いの残ることとなりがちです。そのようなことの無いように普段から思い切り良く掛かる気持ちを忘れないようにしましょう。打たれることを恐れるのではなく、思い切った自分の技が出せないことを恐れるべきです。

そして、稽古の時は、相手より少し強く行うことを心掛けると上達が早いです。先生に対しては当然のこと、自分よりも弱い人に対しても、その人より少し強く行うことを心掛けましょう。手を抜くと言う事ではなく、相手の力量を見極めて、それに対して自分の力を調節すると言うことで、相手の力量を見極める目を養い、自分の力をコントロールする方法を学ぶことができます。実際にやってみるとかなり難しいこと思います。 そして、また、明らかに力差のある相手に対して(例えば経験者が初心者に対して)一方的な稽古(係り稽古など身体と精神力の鍛錬を目的とした稽古を除く)を行うことはただの暴力であって、剣道ではないと言えるでしょう。

 

補足的な練習方法

剣道でもっとも重要な部分は一般的に言って、蹴り足の力と『竹刀』を振り下ろす力(スピード)であると考えられています。ですので、これらの筋肉を効果的に鍛えることが上達の近道であると考えられます。

○竹刀の振りを早くする方法

構えた位置から足を動かさずに『竹刀』を振り上げ、『剣先』が斜め上方に向かう位置で頭上に『竹刀』を止めます。足は使わず、その位置から全力で『竹刀』を出来る限り早く、出来るだけ『剣先』を遠い位置へ振り下ろします。振り下ろした時の『竹刀』を止める位置は相手の頭上の高さにします。人がいれば、立ってもらい相手の頭上すれすれで『竹刀』を止めるように練習すると尚良いでしょう。振り下ろす時はできる限りリラックスした状態から振り下ろし、『竹刀』を止める時は両手首を軽く内側に絞りこみます。絞り込むことで手の内の筋肉を鍛えることができ、打突時に冴えをで出すことができます。 一回一回全力で行うと数回で手首・上腕・肩をかなり強化することができます。続けて行う必要もいたずらに数をこなす必要も無いので、一回一回を全力で行い、疲労が適度に達した時点で止めるようにしてください。

○踏み込み足の矯正・強化

まず、『竹刀』を持たずに正しい構えの足幅を作ります。その位置から左足を動かさずに右足だけで踏み込み、左足は引きつけない様にします。その時、左足の指で床を掴むようにし、そこから左足の指先で床を押すような感じで行います。右足は足の裏全体から踏み込む感じで行い、踏み込んだ時に膝がしなるようにリラックスして踏み込んでください。踏み込む右足の距離は適時変えて行うとより良いでしょう(応用としては踏み込み足を二段打ち、三段打ちと右足だけで行うと尚良い)。

この練習を行うことで、@打突時に必要な左足の踏ん張り(床を掴み押し出す感覚) A左足を動かさずに行うので右足の踵を上げて踏み込むことができず、踏み込み足の矯正することができ B膝をリラックスして踏み込むことを体に覚えさせて、膝への負担を減らすことができ C剣道をする上でもっとも重要なこと、左足を継がずに打ち込む(踏み込む)ことを体に覚えさせることができ D右足の踏み込む距離を変える事で、相手との距離に対応した、様々な距離の踏み込み足を体に覚えさせ、左足を動かさずに『二段打ち』の『踏み込み足』を行うことで『二段打ち』の踏み込みを体に覚えさせることもできます。

以上を意識して行うとより効果的でしょう。

剣道の面白み

『剣道』の面白みは、一般的なスポーツと大きく異なり年齢・性別・体格に関係なく同じ土俵で勝負できる点にあります。通常のスポーツでは20代の人間に5〜60歳の人間が勝つことなど考えられませんが、『剣道』ではそれが日常的に起きています。それは、何故かと言うと、『剣道』は他の競技に比べ競技の要素として技術と精神的な強さ、経験則の比重が大きいからだと考えられます。

つまり、技術と精神面を磨き、経験を積むことで、(当然、体格・体力が勝っている方が有利に越した事はありませんが)年齢・体格・性別と言った本来乗り越えられない壁を乗り越えることができるのです。


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